ガスコントロール技術を活かす 金属3Dプリンターのソリューション提案

ガスコントロール技術を活かす
金属3Dプリンターのソリューション提案

欧米・中国を中心に利用の場が広がる金属3Dプリンター。国内においても航空宇宙防衛産業だけでなく、金型や装置産業など幅広い分野で活用シーンが急増しています。我が国において今後高成長が見込まれる金属3Dプリンター市場において、当社はこれまで培ってきたガス関連コア技術やノウハウを活かし、他社にはない様々なソリューションをお客様に提供しています。今回は金属3Dプリンターに関連した技術開発に携わるイノベーションユニット イノベーション事業部 AMイノベーションセンターの七尾優作さん(以下、七尾)、山口祐典さん(以下、山口)、大野雄史さん(以下、大野)、中西昴さん(以下、中西)をインタビュー。金属3Dプリンター分野における、当社の強みやソリューションについてご紹介します。


大陽日酸が取り扱う世界最先端の金属3Dプリンター群で製作したサンプル各種

Q1:国内外における金属3Dプリンターの市場動向について教えて下さい。
山口:先日、米国に出張した際に改めて感じましたが、欧米を中心に確実に実用化が進んでいます。利用企業は宇宙・航空分野、医療、自動車など多岐に渡っており、金属3Dプリンターを使ってエンジンの製造まで行っている企業もあります。日本においても、急速に利用が広がっている印象ですが、欧米の活用状況と比べるとまだまだ広がる余地が大きいと思います。
大野:日本での活用拡大のスピードが欧米のそれよりもゆっくりなのは、リスクに関する考え方の違いかもしれません。欧米の場合は技術ハードルにぶつかることを開発過程に必要な要素の1つと捉えています。ですから、意図しない開発課題が見つかっても決して“失敗”とは捉えません。日本の場合は、それを失敗と捉えてしまう文化的傾向が強くあります。従来の開発フローを金属3Dプリンターに切り替えることでより高い生産性や機能性、性能改善につながるとしても、開発過程で発生しうる新たな技術課題を避けるのかもしれません。最近では、失敗を恐れず3Dプリンターでどんどん新しいことにチャレンジしたいとおっしゃるお客様も確実に増えていると思います。
お客様の課題は造形品質の安定性
Q2:お客さまが抱える金属3Dプリンター利用上の課題は何ですか?
七尾:多くのお客さまからご相談頂くのは、金属3Dプリンターで作成した造形物の品質の安定性です。金属3Dプリンターで造形する方式は様々ありますが、造形物を固める際に溶接や焼結を行うことは共通した金属プリンターの動作になります。ただ、材料面、季節、環境などの変動要因から、造形物の品質が均一化されない課題でお悩みのお客様から相談をいただくことが多いです。
中西:その原因となるのが、材料に含まれる水分や造形環境における湿気などです。材料となる金属のパウダーに水分が含まれることによって、造形の際に水分が邪魔をして、設計意図どおりに仕上がらないといった問題が発生します。また、造形環境も重要です。造形時は局所シールドや造形チャンバー内をアルゴンガスや窒素に置換しますが、残存する酸素や水分量の変動が造形部品の品質不安定化に寄与することを我々の研究により明らかにしました。造形雰囲気の安定化というアプローチは、当社が長年お客さまのお悩み解決に貢献してきたガス技術によるソリューションそのものではないでしょうか。
 

    
七尾さん㊧と中西さん

独自技術を活かしたソリューションを提案
Q3:お客さまの抱える品質面の課題に対して、当社はどのような技術でどのようなソリューションをご提案していますか?
山口:当社のコア技術を活かし、これまで様々なソリューション開発をおこなってきました。材料の粉末保管については、水分の吸着を防ぐ当社の専用キャビネットで保管することによって、長期間の保管が可能になります。また、造形時の季節影響を抑制するために、酸素と水分を限りなくゼロにし、季節影響を受けずに安定した造形を行うことができる装置も独自開発し、お客様から高い評価をいただいています。さらに造形時の溶接品質を高める当社ならではの技術開発も積み重ねており、課題となる造形品質の安定化に大きく貢献することが可能となっています。
大野:また、当社では世界でも最先端を行く欧米メーカーとパートナーシップを結んでおり、様々なニーズに対応できるようほぼ全方式の金属3Dプリンターや特徴的な金属パウダーをラインアップしています。ものづくりにおける専門知識をお持ちのお客様との技術打ち合わせやAMイノベーションセンターでの実サンプル造形などを通じ、我々にしかできないような具体的なソリューション提案をワンストップで行っています。それぞれの方式で特長が異なるため、使用目的やアプリケーションなどをお伺いしながら、当社ならではのコスト、機能の両面で最適な機種とシステム、金属材料の組み合わせをご提案することで高い評価をいただいています。

    
機器の説明をする大野さん㊧と作業中の山口さん

金属3Dプリンターの利用拡大を目指して
Q4:今後、担当している開発業務を通してどのようなことを目指していきますか?
七尾:ワイヤーを材料に使う方式の金属3Dプリンターでは、ワイヤーを溶接した層を重ねながら造形します。この溶接パスを最新のAIを用いて自動的に最適化して造形品質を安定化させる技術や造形時間のスピードアップを目指す技術開発に取り組んでいきます。
大野:現状の主なユーザーは大~中規模の企業中心になっていますが、金属3Dプリンター1台あれば、さまざまなことにチャレンジすることができます。今後、見込まれる“分散社会”の中で、地方企業での利用を促進して、地域経済の活性化や地域振興につながる取り組みを促進したいです。
山口:金属3Dプリンターは様々なことに活用できることを技術的な側面から利用者になり得る方々へアピールを図りたいです。先ほども話がでましたが、プリンターと材料によって、出来ることは大きく変わります。それぞれで何ができるのかをPRし、お客さまにおける、より高い付加価値への貢献を目指したいです。
中西:金属3Dプリンターを使った事が無い方に、使って頂きやすい環境を整えていきたいと思います。これまでのものづくりとは違いジェンダーや経験を問わない技術ですし、やはり使って頂くことで、「こういうことができないか?」や「こんなことには使えないか?」などのアイデアが生まれてきます。そのようなニーズをくみ取り、金属3Dプリンターの普及に努めていきたいです。
 


インタビューした左から七尾さん、中西さん、山口さん、大野さん