排ガス処理に新たな選択肢 水素を燃料にした排ガス処理装置「Blisters Burner H 2 」

排ガス処理に新たな選択肢
水素を燃料にした排ガス処理装置「Blisters Burner H2

半導体関連産業向けに展開する、大陽日酸の排ガス処理装置。時代の要請に応える形で、性能の向上と共に製品のラインアップを増やしてきました。近年はカーボンニュートラル(CN)への対応製品として「Blisters Burner H2」を投入するなど、より積極的に製品開発を進めています。今回は昨年から販売を開始した「Blisters Burner H2」の特徴や導入メリットなどについて、電子機材ユニット 電子機材機器事業部 機器営業部 営業課長の田尾秀樹さんと、同課の水野理規さんにお話を聞きました。※公開日:2025/10/★、所属は取材当時


排ガス処理装置「Blisters Burner H2


「Blisters Burner H2」の概要
 2024年4月から販売を開始した「Blisters Burner H2」は、従来モデルである化石燃料を使用する「Blisters Burner」をベースに排ガス中の水素ガスを燃料として有効利用する「Hercules Burner」の技術を組み合わせ、燃料源を従来の化石燃料からH2ガスへ適応させた排ガス処理装置です。
 本製品の装置構成としてはバーナー部、一次冷却部(水槽部)、二次冷却部(スクラバー部)より構成されています(図 1)。半導体製造装置から排出されたガスはバーナー部へ導入され加熱分解されます。バーナー内部は部材の腐食防止及び二次生成物である粉体の付着を防止するための冷却空気を供給しており連続稼働に対する装置安定性を高めています。一次冷却部(水槽部)では高温状態の処理ガスを急速冷却するとともに、筒が水槽内部に浸漬されているため、ガスの流れに伴う攪拌効果が得られます。その後、二次冷却部(スクラバー部)にてガスの最終冷却及び処理ガス二次生成物の HF、HCl 等の水溶性ガスを洗浄除去します。
「Blisters Burner H2」の特徴
この水素を燃料とする燃焼除害装置は、長年排ガス燃焼処理に関する技術開発を行ってきた当社だからこそできることなのです。田尾課長はこう話します。「この装置の特長は、安定した水素火炎の形成と安全な着火機構です。水素ガスは天然ガスと比べ燃焼速度が10倍ほど速いため逆火現象発生のリスクが高いことが知られています。本装置はガスの混合方法を工夫することで逆火のリスクを低減するとともに、水素火炎を処理ガスに効果的に接触・混合させることで水素ガスリッチな排ガス以外でも排ガス処理可能なバーナー部を実現しました。さらに、着火源として「Hercules Burner」でも実績のある水素ガスを燃料源とする専用の点火バーナーを採用しています。


図1:「Blisters Burner H2」による排ガスの処理フロー


 除害性能について水野さんはこう話します。「本装置は、バーナー部中央に流れる処理ガスの周囲を囲うように燃料ガス・支燃性ガスを導入することで、形成した水素火炎と処理ガスを効率的に接触させて除害性能を向上しています。除害性能は化石燃料を燃料源とする従来モデルと同様に特殊ガスに関してはTLV値以下まで処理ができ、PFCガスの分解効率は95%以上あります」。 
 また、従来の化石燃料を用いた「Blisters Burner」から軽微な変更で水素燃料仕様に変更が可能なことも特徴の一つです。「CN社会実現に向けた動きが今後さらに加速し将来的な水素燃料需要の増加を見込んだ設計となっています。既に将来水素燃料へ変更すること前提でBlisters Burnerをご購入頂いたお客様もいます」(水野さん)。
環境負荷の低減にも貢献
「Blisters Burner H2」は燃料に水素を使用するため、燃料由来のCO2の直接排出をゼロにすることが可能です。また、従来の化石燃料を用いた燃焼処理と比較して、PFC(炭素とフッ素が結合した化合物)分解において 30~50%の投入エネルギーの削減が可能となりました。投入熱量が減ることで冷却に使用する給水、排水量も削減が可能です。さらに給排水量を低減する必要がある場合は、オプションとして排水低減ユニットを提案します。
 徹底した粉付き対策による安定稼働性能、長年の水素燃焼研究開発に基づく安全性、水素燃焼による環境負荷低減、これら三つの特長によりお客様の事業活動に貢献することが可能と考えます。
今後も増える製品ラインアップ


田尾さん


 2024年12月、当社はレゾナックグループが日本および台湾において営む排ガス処理装置事業の譲受について合意し2025年6月に譲渡が完了しました。同グループの排ガス処理装置事業を得たことで、当社の排ガス処理装置に触媒式が追加され、ラインアップが増強されました。 ラインアップの増強効果について田尾さんは、「これまで当社で扱っていなかった方式の製品モデルが加わることで、お客さまに合わせた提案の幅がグッと広がります」と今後に期待を寄せます。また同グループから得た技術をベースとした新たな製品開発も推進中。これからも当社の排ガス処理装置は時代の先端を走り続けます。