大陽日酸技報 No.42(2023)

技術紹介

プラントエンジニアリング分野における構造解析の活用
Structural analysis in the field of plant engineering

産業と技術革新の基盤をつくろう

当社で扱うプラントエンジニアリング分野の機器装置を対象とした構造解析の活用例を紹介する。構造解析はコンピュータの仮想空間上で,構造物に対し荷重が掛かった際の変形や応力,また構造物に対する振動特性等を数値化し,定量的な評価や分析を行う数値解析技術である。プラントエンジニアリング分野の機器装置は多種多様で,複数部品から構成される複雑な構造物となる。構造解析を活用し,実機では把握が困難な強度や振動特性を評価することで,稼働時の負荷に耐え得る機器装置の安全性確保に繋げることが可能である。
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金属積層造形向け回転TIG溶接技術の開発
Development of rotary TIG welding technology for wire and arc additive manufacturing

産業と技術革新の基盤をつくろう 

アーク溶接を応用した金属積層造形技術であるWAAM(Wire and Arc Additive Manufacturing)向けの新たなTIG溶接技術を開発した。開発したトーチは、トーチ中心から送給されるワイヤの周囲をタングステン電極が周回しながら、入熱を与えるという,これまでにない革新的な機構を有する。種々の実験から従来TIG溶接と比べて均一な積層物が得られる事や,造形速度に対して適切な電極回転速度を適用することが重要であることを確認した。
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半導体製造向け高純度固体プリカーサーMoO2Cl2の供給技術
Supply technology for high-purity solid-state precursor MoO2Cl2 for semiconductors

エネルギーをみんなにそしてクリーン

MoO2Cl2とその供給システムを開発・製品化するための要素技術開発を行い、下記結果を得た。
・すべての金属不純物が < 100 wt.ppbの高品質MoO2Cl2材料とその品質管理技術を確立した
・MoO2Cl2の品質を維持する管理技術を確立した。
・返却容器の容器整備技術を確立した。
・容器ヒーター加熱方法を最適化し,高流量でも安定した供給技術を確立した。
これらの技術確立によりMoO2Cl2の充填~供給~容器整備~品質管理まで一貫して対応できる体制を構築した。
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カーボンフリー除害の開発(水素燃焼式排ガス処理装置:Blisters Burner H2
Development of abatement system using no fossil fuels(Combustion Abatement System using H2: Blisters Burner H2)

   

地球温暖化対策としてPFC(パーフルオルカーボン)排出量削減、非化石エネルギー活用という社会課題に対し、様々な電化に限らず、様々な非化石エネルギーを産業活用できる選択肢が市場に提供することが求められている。
当社は、PFCを使用する半導体業界をターゲットとした水素燃焼式排ガス処理装置(Blisters Burner H2)の開発をおこない、2024年4月より製品上市する。本製品は、H2ガスのみを燃料ガスとして使用し、従来の化石燃料燃焼に比べ省エネルギー化を実現した製品である。
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商品紹介

ワイドレンジ型液化窒素式サブゼロ装置
Sub zero device with extended operating temperature range

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ワイドレンジ型液化窒素式サブゼロ装置は,1台の装置で超サブゼロから低温焼戻しまでの温度範囲(-150~+200℃)に対応し、省スペース化や作業の効率・環境の改善に大きく貢献する。 また、新規断熱材や当社独自の熱絶縁構造・扉パッキン加温機構の採用により、幅広い温度範囲に対応しながらも装置の小型化、着霜・過熱防止、シール性能維持を実現した。加えて、液化窒素の霧化供給により、超サブゼロの温度帯においても液溜まりを防止し、精密な温度制御を可能とした。 部品の小型化と耐久性の両立に向けた超サブゼロの要求は増えており、人手不足から生産性の向上を求める声も大きくなっており、今後、本商品の需要は拡大していく見通しである。
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関連サイト:新型サブゼロ装置2機種の販売開始のお知らせ

表面改質銅ナノ粒子
Surface modified copper nanoparticles

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当社は酸素燃焼による金属ナノ粒子の製造技術を保有し、当該技術により製造した銅ナノ粒子は、平均粒径が100nm程度で、高純度、高結晶性という特長がある。この銅ナノ粒子を導電性インク・ペーストに適用するために、有機溶剤への分散性改善を目的として表面改質銅ナノ粒子を開発した。表面改質銅ナノ粒子は、表面に疎水膜が形成されており、従来の銅ナノ粒子と比較して有機溶媒中の分散性が大幅に改善した。また、耐酸化性が向上したことで取扱いが簡便になり、焼結時には緩慢に熱収縮することが確認できた。これらの長所から表面改質銅ナノ粒子は薄層電極や微細配線を形成する為の導電性インクや導電性ペーストのフィラーとして好適である。
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10ton/日規模 CO2回収PSA装置
CO2 Recovery PSA with Capacity for 10 Tons Per Day

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政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を受け、脱炭素社会の実現に向けたCO2回収への関心が高まっている。現状の日本国内における取り組みは、火力発電所などの大規模なCO2排出源(千ton/日規模)からのアミン吸収法を用いた回収事例が多い。しかしながら、今後は全国に分散する中小規模CO2排出源(数~数十ton/日規模)からの回収も重要となる。 今回、中小規模CO2排出源をターゲットとした、10ton/日規模のCO2回収PSA(Pressure Swing Adsorption)装置を開発・商品化したので紹介する。
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MOCVD装置向け低蒸気圧原料供給ユニット(LVシリーズ)
Low Vapor Pressure material supply unit for MOCVD equipment “LV series”

  
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MOCVD(有機金属化学気相成長)法による、窒化物半導体は、その優れた物理的特性により、高周波・高出力デバイス、LED、レーザーなど広く応用されている。近年、窒化物半導体の成長時に、新規原料(Sc:スカンジウム等)を添加すると、従来にはない有用な特性が発現することが明らかになっている。しかし、これらの原料は、いずれも非常に蒸気圧が低く、MOCVD炉への効率的な供給が困難であった。本報では、この課題を解決するために開発した低蒸気圧原料供給ユニットについて紹介する。
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水素燃料対応酸素バーナ
Innova-Jet Hydrogen/ Innova-Jet Swing Hydrogen/ SCOPE-JET Hydrogen Oxy-fuel Burner using Hydrogen

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大陽日酸は工業炉向けに酸素燃焼技術を開発し,SCOPE-JET,Innova-Jetなどの商品を顧客へ提供している。カーボンフリー燃料である水素の工業炉での利用を目指し,既存製品の水素燃料化対応を完了したので,その商品を紹介する。
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関連サイト:大陽日酸ガス関連機器サイト

設備紹介

支持構造体 (液化水素貯槽用) 等の断熱性能を測定する装置
Cryostat (Boil-off Calorie Meter) for Measuring Thermal Conductivity with Producing Uniform Contact Pressure to Specimen (Supporting Structure used for Liquid Hydrogen Storage Tanks, etc.)

産業と技術革新の基盤をつくろう

ボイルオフカロリメータ法により「液体水素貯槽用支持構造体」の断熱性能を測定・評価する装置を製作した。この断熱性能測定装置は、様々な要素部材で構成される支持構造体(直径約1m,高さ約0.3mの断熱材)等の断熱性能を定量化することが可能である。また、試験体に任意の接触圧力を印加した状態で断熱性能測定を行うことも可能であり、試験体が実際に使用される環境での接触熱抵抗の状態を模擬した断熱性能測定ができる。今回は液体水素貯槽用支持構造体をターゲットとしたが、その他様々な構造体の断熱性能の測定・評価にも応用が期待できる。本装置は、宇宙・低温エンジニアリング部の優れた技術・ノウハウにより設計・製作されたものである。
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関連サイト:大陽日酸の宇宙・低温事業

重水再濃縮装置
Re-enrichment Apparatus for Heavy Water

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重水素化合物製造の際に生じる使用済み重水を,再利用可能な濃度まで再濃縮する装置を開発・設置した。本装置は当社の酸素同位体分離技術の知見を活かし,複数の蒸留塔によるステップカスケードプロセスを採用した構成となっており,起動後の待機時間短縮が図られている。重水素濃度99.0 atom%以上の再濃縮重水を年間150 kg以上生産可能であり,近年需要が増加していている工業用途向け重水素化合物の供給力強化に貢献している。
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関連サイト:大陽日酸ニュースリリース:国内企業初!重水の再濃縮装置を開発しサステナブルなリサイクル体制を構築~再製品化で重水素標識化合物の供給力を強化~

システム紹介

当社製品ガスにおける信頼性確保のための分析管理体制と業務システム
Analytical management and work systems of our product gases for ensuring reliability

産業と技術革新の基盤をつくろう  

当社産業ガス製品の高い品質を保証するため,つくば開発センター分析技術部と関連会社である各製造事業所は連携して分析業務の信頼性確保に努めている。製造事業所における製品分析の信頼性保持のために,2つの制度を運用している。ひとつは,製造事業所の製品分析の力量を担保する「分析管理事業所評価登録制度」である。もうひとつは,製造事業所で実際に業務に携わる分析技術者の育成と能力認定を行う「分析技術者技量認定制度」である。また分析技術部では,製造事業所の分析値とのクロスチェックや,製造事業所において実施困難な極微量の不純物成分の分析を行っている。合わせて,LIMSによって,分析業務の効率化と分析結果報告書のデータ信頼性を確保している。
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