CLOSE-UP/環境負荷低減のための水素プロジェクト

環境負荷低減のための水素プロジェクト/大陽日酸は環境への負荷を抑える究極のエネルギーの水素ガスを使用した水素エネルギー社会の実現に向けてガス技術で挑戦し、大きな成果をあげています。

燃料電池自動車向け水素ステーションの開発

次世代クリーンエネルギーの実用化をめざして

大陽日酸は、産業ガスの製造と供給装置の開発・製造で培った技術やノウハウを活かして、次世代のクリーンエネルギーとして期待される 燃料電池の実用化プロジェクトに参加しています。

水素ステーションの開発を軸に

大陽日酸の水素ステーション開発の取り組みは、合併前の日本酸素時代、1993年にスタートした国家プロジェクト、WE-NET計画※1に参画したことに始まります。CNG(圧縮天然ガス)ステーション開発を通じて蓄積した圧縮ガスのコントロール技術が評価され、WE-NET計画における重要テーマの一つ、水素供給ステーションの開発に携わることになったのです。そこで得た水素ガスコントロール技術や、水素ステーションの運営ノウハウをコアに、当社はクリーンエネルギー分野における研究開発テーマを「水素ステーションの実用化」に絞り込みました。

数年後、それらの技術は、2002年に発足した新たな国家プロジェクト「水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)※2」で花開くことになりました。WE-NET計画が地球規模のエネルギー輸送を企図していたのに対して、JHFCの目的は「燃料電池自動車の実証研究」と「燃料電池自動車用水素供給設備の実証研究」という、燃料電池自動車の実用化に特化したものであり、極めて現実的なプロジェクトでした。また、JHFCには国内自動車メーカーをはじめとして、石油元売や都市ガス会社、産業ガスメーカーなどが参画するなど、燃料電池自動車の実証研究としては国内初かつ大規模なプロジェクトであり、各分野から大きな期待を集めていました。

当社は、このプロジェクトに発足当初から参画しており、発足間もない2002年12月には、JHFC初となる水素ステーションを霞ヶ関に開設し、燃料電池自動車への水素供給を開始しました。

その後、2003年にはJHFC千住ステーションを、2005年の「愛・地球博」では万博会場間の輸送手段として活躍した燃料電池バスへの水素供給を目的とした「JHFC愛・地球博水素ステーション」を開設。なかでも地球博会場への設置は、安定供給のために、当時国内最大規模の水素ステーションを2ヶ所に設置するなど大規模なもので、実用化への大きな一歩として高く評価されました。

現在は、2010年度で終了したJHFCのプロジェクトに代わって水素供給インフラの実証研究を行う「水素供給・利用技術研究組合(HySUT)」に参画し、2011年2月には成田水素ステーションの建設工事を完了しました。

「成田水素ステーション」は、製油所などで製造した高圧水素ガスを水素カードルで運ぶオフサイト方式であり、都心と成田国際空港間におけるハイヤー会社などによる燃料電池自動車の運行を支援しています。

霞ヶ関ステーション

JHFC千住ステーション

  • ※1

    WE-NET計画:水力、太陽光、風力等の再生可能エネルギーを水素等の輸送可能な形に転換し、世界の需要地に輸送して利用することをめざしたという大規模な国家プロジェクト。2002年に水素供給ステーションが完成するという成果を得ることで節目を迎え、別のプロジェクトに引き継がれました。

  • ※2

    水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC):独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う燃料電池システム等実証試験研究事業助成金の交付を受けて実施されている事業です。

高度な圧縮ガスコントロール技術と蓄積した豊富な運用ノウハウ

こうした水素ステーションの実証研究により、大陽日酸は圧縮ガスコントロール技術に加えて、水素ステーションを安全かつ効率よく運用するノウハウを蓄積し、実用化への足固めを進めてきました。

なかでも重要なのが、水素ガスを安全に供給するノウハウです。水素ガスをタンクに供給する際、水素ガスが急激に高圧に充填されると、水素ガスの温度が上がってタンクの許容温度を超える危険があります。このため、ガスの温度を下げたり、時間をかけてゆっくりタンクに入れたりすることで、ガスの温度上昇を抑えるのですが、そこでは高度なガスコントロール技術が必要になります。こうした技術を有し、供給装置を自社開発できるのは、CNG時代からの豊富な経験をもつ当社ならではの強みといえます。その後、2005年には、70MPaという高圧型の水素供給装置(ディスペンサー)を製品化し、その品質の高さは定評を得ています。

現在では、当社は産業ガスメーカーとして培ったガス製造・供給ノウハウを組み合わせて、製造から輸送、貯蔵、供給まで、水素ステーションをトータルに開発・運用できる存在として、大きな役割を担っています。

高圧水素ディスペンサー

70MPa/35MPa移動式水素ステーション
大陽日酸は、従来まで主流だった35MPa供給に加えて、70MPaでの水素供給を可能とした水素ステーションを国内で最初に製品化しました。これにより、燃料タンクの容量を変えずに走行距離を伸ばすことが可能になりました。

石油コンビナートにおける効率的な水素利用

姉ヶ崎事業所

現在、大陽日酸では、燃料電池自動車用水素ステーション以外の新たな分野での水素の用途開発に取り組んでいます。

その一つが、石油コンビナートにおける水素の効率的利用です。現在、石油コンビナートでは競争力強化のために効率化が求められる一方、これまで以上に環境への配慮が求められています。そこで当社は、石油製造工程から発生する水素ガスをクリーンエネルギーとして効率的に利用するシステムを提案し、環境負荷の低減に貢献しています。たとえば、千葉コンビナート内の当社姉ヶ崎事業所では、石油精製プラントから出る水素ガスを回収・再利用する水素基地を開設し、低純度の水素を発電などに再利用する技術開発に取り組んでいます。

今後も高度なガスコントロールを発揮し、水素ガスの可能性をさらに広げていきます。